板東三十三観音 群馬    平成22年7月17日

 昨年6月に埼玉の札所へお参りしたまま、1年が過ぎました。昨年9月初め、父は朝のラジオ体操の
帰りに尻餅をついて、背骨を一つつぶし、あれほど背筋をピッと伸ばしていたかっこいい父の背中が
丸くなってしまいました。寝付いてしまうかと心配しましたが、復活、とはいえ体力の衰えも進み、お参りに行きたいのは重々承知しているものの、なかなか踏み切れません。

 それでもちょっとしたことがあって妹と「行こうか?行こう!!」と決断。一番短時間で行けるのは
高崎まで新幹線を乗り継いで、高崎駅からはレンタカーで長谷寺と水澤寺を廻るコース。車いすを
持っていきます。決めたものの、のんきにしていたら、妹夫が「三連休の初日だから、指定を取ら
なくちゃ」とレール&レンタカーの手配をしてくれ、おまけに同行してくれるとのこと、運転の苦手な
私には願ってもない話です。結局妹の娘も含めて、父の付き添いは4人という大名旅行となりました。

 あらかじめ駅に(車いす使用を)連絡しておいた方がいいという妹娘のアドバイスで、妹夫が電話を
しておいてくれました。お陰でどの駅でも駅員さんが乗降口で待っていてくれ、車いすの父を乗り降り
させてくれました。車いすの扱いにも慣れている様子で、「さすが!!」と感動。

 特に東京駅は工事中でもあり、とても私たちでは上越新幹線のホームにたどり着けなかったで
しょう。乗車後父は全く歩けないわけではないので、車いすはデッキに置き、座席までは歩いて
貰うことにしました。

 去年、埼玉へ行くときに初めて東北新幹線に乗り、今回は初めての上越新幹線、元国鉄職員の
父も嬉しかったでしょう。東海道山陽新幹線にはいくらでも乗る機会がありましたけど、OB会は
いつも名古屋だったので東京以東には行く機会がなかったのです。




 高崎で降り、トイレと思いましたが、駅員さんにいつまでもついていて貰うのは気の毒なので
レンタカーのある西口まで連れてきて貰い、そこで私たちだけになり多機能トイレに入りました。
ここで事件発生 (@_@;?)
 
 トイレに入ったとき、たまたま清掃員のおじさんがいました。
で、何の気なしに「どうやれば閉まるの?」と聞いて、言われたように
閉めてしまいました。開けたままにしておこうかと思ったけど、やっぱり人は通るし、
家の中じゃないからさすがにねえ。それに母なら私もそばについてるけど、老いたりと言え
どもさすがに父のトイレにつきそうのも気が引けます。息子でもいたらそばについていさせたの
だけど、義弟はレンタカーを取りに行ってこの時はいませんでした。

で、そろそろ終わった頃かと外のセンサーに触れたけど開かない。そりゃあ考え
てみたら当たり前で、これが開いたら中の人はおちおちトイレに入ってられません。
私たちは真っ青(-_-)。中の父に開け方なんか教えてなかったのですから。

清掃員のおじさんがすぐに駅員さんに知らせてくれましたが、なんとこのトイレは
市の担当で駅では鍵を持ってないそう。このトイレはセンサーで開閉、その横に
鍵穴がついてるだけ。内外どちらからでも開閉可能で中からロックというシステ
ムではありません。

首を長くして待っていましたが、15分ほど経っても来ないので、再度電話したところ
「担当者に連絡がつきません」との返事に唖然としました。一刻を争う事態にこの
対応が許されるでしょうか?交番に行ってもだめ、万策尽きて中の父に「腰のあたりに
センサーがあるはずだからとにかく探して触って」と皆で大声で叫んでいたところ、
幸いにもセンサーに触れたらしく、数分後に開いたときには歓声が上がりました。
87歳、心臓が悪く歩くのがやっと、目は緑内障で視野欠損の状態ですが、呆けては
いないのでこちらの叫び声が理解できたようです。しかし長時間立っているのに
耐えられず、尻餅でもついて骨折したらと気が気ではありませんでした。
今回は幸いにも事なきを得ましたが、通りがかりの人が「以前にもこういうことが
あって大騒ぎした」と言ってました。一人で入って中で意識不明になったりした場合、
どうなることでしょう?非常用の連絡先がなんの役にも立たなかった今回のことを
思うと不安が募ります。

ここで予定より30分遅れましたが、ともあれ駅員さんにお礼を言って、レンタカーに
乗り込み出発です。

ちなみに状況報告と下記のような要望を文書にして、高崎市役所に送りました。 

                        記

1. 「多目的トイレのドアの鍵は、約20〜30分で自動的に開錠します。使用時に点灯する
「使用中」のランプが点滅し始めることで、外の人にその開錠をお知らせします。これは
もともと急病等で意識を失った、自身で救助を呼べない利用者発見のための機能で、
長期滞在=緊急事態というトイレ内の異変を外部に告げる警告灯の役割を持ってい
ます。」という仕組みのトイレもあります。高崎駅のトイレは確かに指定時間を過ぎたら
ランプは点滅し始めましたが、それだけです。緊急事態を想定した場合、中のセンサーに
触れることでしか開かないというシステムは欠陥ではないでしょうか?
2. 「このトイレはいったん入ってしまうと中からしか開きません。開け方を確認してから
閉めて下さい」というような表示をして下さい。
3. 駅にも合い鍵を置いて下さい。駅側と市の担当者で非常時の対応についてきちんと
うち合わせておき、緊急時には駅員に通報してくださいと表示して下さい。

十五番札所 白岩山長谷寺

本当はもうちょっとゆっくりお参りしたかったけど、トイレ事件で出発が遅れ、帰りの
新幹線に乗れないと困るので、さっさっと・・。それと暑さもかなりだったのです。
と言っても、開経偈・般若心経・御詠歌・普回向はきちんと唱えました。

  

左は仁王門、立派です。ただ駐車場から寺に入ると仁王門を通らないので
うっかりすると見逃してしまいそうです。

 

十六番札所 五徳山水澤寺

   

着いた途端、あまりの賑わいにびっくりしました。地場産品をたくさん売ってます。
バスで遠足にきたみたいな人たちもいます。
家までずっと車なら野菜なども買い込んだのですが、横目で見ながら観音堂に
向かいました。解説本では100段の階段を上ると書いてあったのですが、ここも
長谷寺と同じように駐車場から入ると、仁王門は通らず、階段も全くありません。
ただ観音堂までは坂道だったので、「後ろ向きに進んだら」というアドバイスに従って
バックオーライ(^.^)ノ状態です。
車いすは前につんのめるのが恐いです。

売店がたくさん並んで「数量限定」の文字に「早く買わなくちゃ」(^_^;)。

  

本堂(観音堂)

  

六角二重塔。六地蔵を祀ってあり、輪蔵を押し回しながら供養を願う。
もちろん私も一回り。

100段の階段は免れたものの、本堂前は砂利で車いすは押しにくく、
行きが下り坂なら当然帰りは上り、車いすを押す手にも力が入ります。

門前の水澤うどんの店に入り、遅い昼食。
あとは一路高崎駅に向かいましたが、帰りの新幹線までには少し間があったので
駅ビルでコーヒーを飲んで一休み。

ホームでは駅員さんが車いすの介助をして下さり、なおかつ私たちの予約席は
2階なので、「フラット席を確認したら空いているので交換しますか?」と
気をきかせてくれました。行きと違って帰りはすいていて、フラット席の部分は
他の乗客がおらず貸し切り状態でした。朝のトイレと言い、、駅員さんには
本当にお世話になりました。

東京駅ではホームへの上り下り以外は、朝のようにエレベーターを使わず、ずっとスロープを
使って東海道新幹線のホームへ連れて行ってくれました。なるほどこんな風にスロープを
作ったのか?などと自分だけの旅行の時とは見方が全く変わりました。

東海道新幹線では女性の車掌さんが静岡駅で降ろして下さり、その後は静岡駅の駅員さんが
改札まで車いすを押して下さいました。本当に大勢の方にお世話になり、父の望みが叶いました。

さて、板東三十三観音は茨城県の日輪寺を残すのみです。ここはさすがに・・・・(-_-)